サンフランシスコ日本語補習校

学校長あいさつ 『さらに、一歩前進』

学校長 水谷  靖

 

 後期がスタートしました。

 後期を迎えることができましたのは、これまでに補習校に関わってくださったすべての皆様のおかげです。心より感謝申し上げます。

 本校「サンフランシスコ日本語補習校」は、幼稚部・小学部・中学部・高等部がある世界最大規模の補習授業校です。

 サンフランシスコ市に、「幼稚部・小学部(以下、幼小部)サンフランシスコ校」と「中学部・高等部(以下、中高部)サンフランシスコ校」の2校、シリコンバレーに、「幼小部サンノゼ校」、「中高部サンノゼ校」の2校を構え、合計4校に1400人近い子どもたちが通っています。

 本校は、学校教育目標を『日本語で学び考え、国際社会に貢献する、生きる力の育成』としています。その目標の達成に向け、「日本語で学ぶ楽しさを感じる授業」を重点に取り組んでいます。

 目指しているのは、子どもを主語に、子どもたち一人ひとりが新しいことを学び取り、自分で考えた末に分かって、仲間といっしょにできて「うれしい」「楽しい」といった達成感や満足感を実感させ、「もっと勉強したい」「さらに進めよう」という主体性を育てることです。

 そのために本校には、次の人たちが関わってくださっています。

 先ず、講師の皆様です。子ども一人一人の理解度を振り返りながら、更に工夫して授業を進めることに「楽しさ」を感じながら、1時間の授業の流れや単元を見通した指導計画の工夫、家庭学習を習慣化するための宿題の在り方の工夫に取り組んでくださっています。

 次に、保護者の皆様です。第2の先生としての日本語教育、また当番活動やお手伝いを通じて教育活動を支援してくださり、四季の折々には、補習校で学ぶことを一心に頑張っている子どもたちに「楽しさ」が感じられるようにと、古本市やお祭りなどの日本文化体験の場をつくってくださっています。

 さらに事務局の皆様は、子どもたちの学びが「楽しく」なるように、教育環境の確保や充実に努めてくださり、理事会の皆様は、本校の経営を担う組織として事務局と連携し、子どもたちに「日本語で学ぶ楽しさを実感させる」魅力ある補習校づくりに全力でサポートをしてくださっています。

 私は、受けているこれらの恩恵が先人の涙ぐましい努力のたまものと理解しています。また先人の皆様方に深く感謝する想いを持っています。そのうえで、私自身が先人の後継者であると同時に、未来の人たちは自分の後継者であると認識し、学校教育目標達成に向け、『さらに、一歩前進』させ、令和7年度以降に引き継いでまいりたいと考えております。

 『さらに、一歩前進』するには、主語となる「子どもたち」に日本語で学ぶ意欲付けをすることがきわめて大切です。

 そこで、令和6年度から、次のことに取り組んでいます。

 全校・全学年(幼稚部も含めて)で、授業として実施する「振り返りタイム」です。この「ねらい」は、子どもたちが補習校のあった日「一日」や「その日を迎えるまで」の自分自身を客観的に見て、その経験を次の行動に生かすことにあり、うまくいったこと、よかったことに視点を当ててから、できなかったこと、うまくいかなかったことを振り返らせています。

 振り返りをして「改善」、改善したやり方で「再チャレンジ」、この連続により、あきらめずに最後までやり遂げる「学びに向かう力」、補習校ならではの多様な仲間たちと「協働する力」などを育て、「未来の学びをよりよいもの」にすることを目的に取り組んでいます。

 私は、サンフランシスコ日本語補習校というところが、子どもたちは補習校に関わってくださっているすべての人に感謝の気持ちを抱き、日本語で学ぶ楽しさを感じて笑顔になっている、そしてその笑顔を見て、講師や保護者の皆様、事務局及び理事会の皆様も笑顔になれるところになってほしいと願っています。そのなかで、『主体性を育てる』ことをねらいに、日本語で学び考える教育活動により、仲間のよさに気付き、尊重し、協働しながら問題解決に取り組む「生きる力」を育て、持続可能な国際社会の担い手として、「いつか世界の架け橋」となる人に育てることが、学校教育目標達成への『さらに、一歩前進』につながると考えています。

 引き続きましてのご理解とご協力を、どうぞよろしくお願いいたします。

追記

 これまでの実践により、子どもたちは、日本語環境や日本文化に触れることができる環境の中で、異なる個性や背景を持つ仲間とともに、お互いを尊重し合いながら、対話をしながら学び合ってきました。また、自分たちが通う補習校をより良くしよう、より楽しくしようと自分たちで考え実践する成功体験も味わいました。そして英語だけでなく日本語でもコミュニケーションできる言語力、日本の歴史文化を深く理解し、それらを発信できる力も培ってきました。

 これらは、子どもたちがいくつかの難路をくぐり抜けてきた成果で、現地校と補習校の両立という苦労した先に、新しい自分の可能性に気付く「希望の光」を見ることになりました。

 補習校には、成長に大切な「安心と挑戦の循環」の場があります。これからの社会に必要な挑戦する気持ち、仲間を大切にする、感謝の想いを持つ人が育つところです。ここで学ぶ子どもたちの心の想いは、令和5年度卒業生の『答辞』と令和6年度『入学式でのスピーチ』に表現されています。以下にアクセスしていただき、ご一読いただけましたら幸いです。

・令和5年度卒業生『答辞』

  カリフォルニアの風(令和5年度最終号)

・令和6年度入学生『入学式でのスピーチ』

  カリフォルニアの風(令和6年度4月号)