サンフランシスコ日本語補習校

学校長あいさつ 『さらに、一歩前進』

学校長 水谷  靖

 

 「集中学習(6/25~29)」を終えて、4月からの17日間の授業を振り返っています。
 日本語で学ぶことが「楽しい!」と感じられる空間にできたかな。
 「補習校って、いいな!」と思うことができる場所になったかな。

 本校「サンフランシスコ日本語補習校」は、幼稚部・小学部・中学部・高等部がある世界最大規模の補習授業校です。

 サンフランシスコ市に、「幼稚部・小学部(以下、幼小部)サンフランシスコ校」と「中学部・高等部(以下、中高部)サンフランシスコ校」の2校、シリコンバレーに、「幼小部サンノゼ校」、「中高部サンノゼ校」の2校を構え、合計4校に1400人近い子どもたちが通っています。

 本校は、学校教育目標を『日本語で学び考え、国際社会に貢献する、生きる力の育成』としています。その目標の達成に向け、令和6年度も「日本語で学ぶ楽しさを感じる授業」を重点に取り組んでまいります。

 目指しているのは、子どもを主語に、子どもが新しいことを知ることができて、自分で考えた末に分かって、仲間といっしょにできて「うれしい」「楽しい」といった達成感や満足感を実感させ、「もっと勉強したい」「さらに進めよう」という主体性を育てることです。

 そのために、本校には、次の人たちが関わってくださっています。

 先ず、先生方です。先生方は、子ども一人一人の理解度を振り返りながら、更に工夫して授業を進めることに「楽しさ」を感じながら、1時間の授業の流れや単元を見通した指導計画の工夫、家庭学習を習慣化するための宿題の在り方の工夫に取り組んでくださっています。

 次に、保護者の皆様です。第2の先生としての日本語教育、また当番活動やお手伝いを通じて教育活動を支援してくださり、四季の折々には、補習校で学ぶことを一心に頑張っている子どもたちに「楽しさ」が感じられるようにと、古本市やお祭りなどの日本文化体験の場をつくってくださっています。

 さらに事務局の皆様は、子どもたちの学びが「楽しく」なるように、教育環境の確保や充実に努めてくださり、理事会の皆様は、本校の経営を担う組織として事務局と連携し、子どもたちに「日本語で学ぶ楽しさを実感させる」魅力ある補習校づくりに全力でサポートをしてくださっています。

 私は、受けているこれらの恩恵が先人の涙ぐましい努力のたまものと理解しています。また先人の皆様方に深く感謝する想いを持っています。そのうえで、私自身が先人の後継者であると同時に、未来の人たちも自分の後継者であると認識し、学校教育目標達成に向け、『さらに、一歩前進』させ、来年度以降に引き継いでまいりたいと考えております。

 『さらに、一歩前進』するには、主語となる「子どもたち」に日本語で学ぶ意欲付けをすることがきわめて大切です。

 そこで、今年度から新たに、次の二つに取り組んでいます。

 一つ目は、全校・全学年(幼稚部も含めて)で、授業として実施する「振り返りタイム」です。この「ねらい」は、子どもたちが補習校のあった日「一日」や「その日を迎えるまで」の自分自身を客観的に見て、その経験を次の行動に生かすことにあり、うまくいったこと、よかったことに視点を当ててから、できなかったこと、うまくいかなかったことを振り返らせています。チェックし改善、改善したやり方で再チャレンジ、この連続により、あきらめずに最後までやり遂げる「学びに向かう力」、補習校ならではの多様な仲間たちと「協働する力」などを育て、「未来の学びをよりよいもの」に、と願っています。

 二つ目は、集中学習中に実践をした「特別プログラム」です。このプログラムの「ねらい」は、子どもたちに教科を超えた幅広い学びをさせることで、新たなことに興味を持たせること、補習校で「学ぶ」動機付けを図ることです。そこで、仲間とともに学ぶ、異学年との交流を手立てにしました。

 4校それぞれ工夫して臨んだ様子は、ホームページ「学校生活」の中で掲載してまいります。

 実践後は子どもたちから、「予想外の学びがあった」「新たな発見があった」の他に、「○○を調べて見たくなった」「◎◎のことは国語の学習に生かしたい」の言葉があり、「見えなかったことが、見えるようになった」、「さらに詳しく調べよう」「今回学んだことを今後どう生かそうか」という想いになってくれた、と汲み取っています。

 結びに私は、サンフランシスコ日本語補習校というところが、子どもたちは補習校に関わってくださっているすべての人に感謝の気持ちを抱き、日本語で学ぶ楽しさを感じて笑顔になっている、そしてその笑顔を見て、先生方も保護者の皆様、事務局及び理事会の皆様も笑顔になれるところになってほしいと願っています。

 そのなかで、『主体性を育てる』ことをねらいに、日本語で学び考える教育活動により、仲間のよさに気付き、尊重し、協働しながら問題解決に取り組む「生きる力」を育て、持続可能な国際社会の担い手として、「いつか世界の架け橋」となる人に育てることが、学校教育目標達成への『さらに、一歩前進』につながると考えています。 引き続きましてのご理解とご協力を、どうぞよろしくお願いいたします。

追記

 昨年度までの実践により、子どもたちは、日本語環境や日本文化に触れることができる環境の中で、異なる個性や背景を持つ仲間とともに、お互いを尊重し合いながら、対話をしながら学び合ってきました。また、自分たちが通う補習校をより良くしよう、より楽しくしようと自分たちで考え実践する成功体験も味わいました。そして英語だけでなく日本語でもコミュニケーションできる言語力、日本の歴史文化を深く理解し、それらを発信できる力も培ってきました。

 これらは、子どもたちがいくつかの難路をくぐり抜けてきた成果で、現地校と補習校の両立という苦労した先に、新しい自分の可能性に気付く「希望の光」を見ることになりました。

 子どもたちは、本当に、よくがんばっています。その子どもたちの心の想いは、令和5年度卒業生の『答辞』と令和6年度『入学式でのスピーチ』に表現されています。以下にアクセスしていただき、ご一読くださいましたら幸いです。

・令和5年度卒業生『答辞』

  カリフォルニアの風(令和5年度最終号)

・令和6年度入学生『入学式でのスピーチ』

  カリフォルニアの風(令和6年度4月号)

 

 集中学習初日の出来事です。

 この日、幼小部、中高部それぞれに編入生を、お一人ずつお迎えしました。前週に日本から来られたご家族の兄弟です。私は、この日、幼小部、中高部の両校に訪問させていただく機会を得ましたので、二人の様子を見ることができました。

 驚いたことに、そのお二人がさっそく休み時間に初対面の子どもたちとボールを通して交わっているではありませんか。学部が違いますので、お二人は同じ場所にいたわけではありません。 編入初日から、「笑顔で遊び、ともに学ぶ」生活をしていたのには、お二人の資質によるものと思われますが、受け入れる子どもたちの資質にもよると思います。

 サンフランシスコ日本語補習校は、こういう雰囲気のある場所です。その中で、お二人ともが、補習校って「いいね!」「楽しいな!」と心から感じて、この先もそう感じながら、「ともに学びともに生活」をしてくれたら、こちらの方も笑顔になります。 最後までお読みくださり、ありがとうございました。